「うゎー、むげねぇー」「血が出よんやん」「キモチ悪い...」いけすから揚げたブリの頭を木槌で叩いて気絶させ、抜きをする。みるみるうちに流れ出る鮮血。目の前で生命(いのち)を奪う光景に、顔をしかめる子どもたち。その反応のつぶさを、漁師・村松一也さんは見守った。「2年かけて大切に育ててきたブリじゃけん、おいしく食べてあげる責任がある。こうやって活き締めにするのもそのためなんよ」
文/樋口 和美 写真/江上 真

海上の養殖いけすで魚の本能に触れ
大分県の最南端に位置し、リアス式海岸の地形を利用した沿岸漁業が盛んな蒲江町西野浦。この地で養殖業を営む村松水産の2代目・村松一也さんのもとを訪れたのは佐伯市立直川小学校5年生19人。魚の餌付けを体験し、生徒自らが刺し身を引いて食べ、魚食の大切さ、生命をいただくことを学ぶ一日だ。
活き締めした2匹のブリは氷を張った海水に突っ込まれた。時間がたてばたつほど鮮度が落ちてしまうから、いけすから水揚げして冷やすまでのスピードが求められる。約1時間、内臓までしっかりと冷やす。その間に、村松さんは子どもたちを漁船に乗せて、海上の養殖いかだへと連れ立った。モジャコ(藻雑魚=ブリの稚魚)の餌付けを見せるためだ。
給餌機から餌がまかれると、われ先にと勢いよく餌に食らいつくモジャコ。初めて見る者は誰しも興奮する。稚魚とはいえ、本能に触れるからだ。子どもたちの目はモジャコにくぎ付けになる。朝一番に活き締めの様子を見て「食べきらんわ」と、口々に言っていた子どもたちの表情が徐々に和らいできた。