編集長ブログ

■日本社会の転換期


国の膨大な借金、政治の混迷、大企業の統合・倒産、教育現場の荒廃、公共道徳の喪失など・・日本社会は大きな転換期を迎えている。戦後、経済至上主義を掲げ、ひたすらにハイスピードで走り続けてきた日本だが、このままのペースで21世紀も駆け抜けていくことは、どう考えても不可能であることに気付き始めた。つまりは社会全体が、環境も含め持続不可能なのである。いったんスローにシフトダウンし、持続可能な社会の仕組みを作ることが重要であろう。 
こうした時代背景からスローフード、グリーンツーリズム、パーマカルチャー、エコマネー・・・といった時代のキーワードが近年、注目されている。日本人はよっぽど外国から入った横文字が好きらしい。しかし悲観することなかれ。これらの言葉が意味するものは、実は少し前までの日本人の暮らしからすれば、ごく普通のことだったのである。 
その土地に昔からある、遺伝子組み替えもしない食材を、地域に住む人々がその地域の味つけで料理し、家族や仲間と一緒に食す。そうして地域固有の食文化や伝統食、地域の小さな生産者を守っていく運動が"スローフード"である。言葉自体はファストフードの広がりに反対したイタリア国民の一部が片田舎からおこした運動に由来する。この運動はまたたく間に世界中に広がり、スローライフ、スロービジネスなど現代の"スロー"ブームのきっかけとなった。 
また昔のお伊勢参りや湯治旅のようにムラを訪れ、ムラ人たちと交流し、癒される旅が今で言う"グリーンツーリズム"である。 
百姓が牛馬を飼い、その堆肥で野菜を作るなど、ひと昔の農業は全て循環型農業であり、これが"パーマカルチャー"であり、「結」という相互扶助の組織が存在していたムラ社会のなかで、物々交換も含め、地域のなかで流通する通貨が"エコマネー"である。 
どうやら時代のキーワードは昔から日本にあったものの逆輸入という気がしている。 
何故、自分にとって「ムラ」が大切なのか。ムラにはまだ昔ながらの日本人の暮らし、"精神"がかろうじて残っているからである。ムラ人達は自然相手に農林漁業を営み、鎮守の森に囲まれた神社では祭りが行われ、自然のリズムで、自然と共に生きてきたのである。 
自然から謙虚に学び、様々な立場の人々とも共生して生きてゆくことが21世紀に世界規模で求められている。自然、自然相手の仕事、自然な生き方など・・・、現代でも"自然"が身近な「ムラ」にこそ、学ぶべきものは多いはずである。そしてその「ムラ」を残し、後世に伝えていくことが、今を生きる私たちの役割だと思っている。 
2003年11月13日 養父信夫